Microsoft 365を導入している企業において、退職者に割り当てたライセンスがそのまま放置されているケースは少なくありません。
月額1,500円程度のライセンスでも、10名分が1年間放置されれば18万円、
50名分なら90万円もの無駄なコストが発生します。
本記事では、Microsoft 365管理センターを活用して、退職者に関連するライセンスコストを適切に管理し、データ保持の要件も満たしながらコスト削減を実現する具体的な手順をご紹介します。
なぜ退職者のライセンスが放置されるのか
よくある課題
- 業務の優先順位が低い:日常業務に追われ、ライセンス管理が後回しになる
- データ保持の懸念:メールや文書を削除してしまう不安から、ライセンスをそのままにしてしまう
- 手順の複雑さ:適切な処理方法がわからず、そのまま放置してしまう
- 部門間の連携不足:人事部門とIT部門の情報共有が不十分
これらの課題を解決するには、明確な手順と適切なツールの活用が不可欠です。
コスト削減の基本戦略:3つのステップ
ステップ1:サインインのブロック
退職者が組織のリソースにアクセスできないよう、まずはアカウントを無効化します。
Microsoft 365管理センターでの操作手順:
- Microsoft 365管理センター(https://admin.cloud.microsoft/)に管理者アカウントでアクセス
- [ユーザー] > [アクティブなユーザー] を選択
- 対象ユーザーを選択し、[サインインをブロック] を実行
- 必要に応じてパスワードをリセット
Active Directory環境をお持ちの場合は、オンプレミスのAD上でアカウントを無効化することで、自動的にMicrosoft 365側にも反映されます。
ステップ2:データの保持方法を選択
退職者のメールや文書を保持する必要がある場合
1:共有メールボックスへの変換
最大のメリット:ライセンスが不要になり、最大50GBまでのデータを保持可能
共有メールボックスにアクセスするには、ユーザーがExchange Onlineライセンスを持っている必要がありますが、共有メールボックス自体には別のライセンスは必要ありません。
つまり、後継者や関係者がメールを閲覧できる環境を維持しながら、ライセンスコストをゼロにできます。
重要な注意点:
- メールボックスが50GB未満の場合は、ユーザーからライセンスを削除し、その支払いを停止できます。ユーザーのアカウントは削除しないでください。共有メールボックスではそれをアンカーとして必要としています
- メールボックスが50GBを超える場合は、事前にデータを整理するか、Exchange Online プラン2のライセンスを割り当てて100GBまで拡張する必要があります
- 訴訟ホールドやインプレースアーカイブを使用している場合は、これらの機能を無効化してからライセンスを解除する必要があります
参考:ユーザー メールボックスを共有メールボックスに変換する – Microsoft Learn
Japan Azure Identity Support Blog:Microsoft 365・入退社時のユーザー管理を効率的に行う
2:非アクティブなメールボックス
Microsoft 365 Business Premium、E3、E5ライセンスをお持ちの場合、訴訟ホールドやアイテム保持ポリシーを設定することで、ライセンス削除後も非アクティブなメールボックスとしてデータを保持できます。
特徴:
- 法的要件やコンプライアンスに対応
- 電子情報開示ツールでの検索が可能
- 長期的なデータ保存に適している
制限事項:
- Exchange Online Plan 2またはExchange Online Archivingアドオンが必要
- 新しいメールの送受信はできない
3:OneDriveデータへのアクセス権付与
文書データの引き継ぎについては、退職者のOneDrive for Businessへのアクセス権を後継者に付与します。
操作手順:
- Microsoft 365管理センターで [ユーザー] > [アクティブなユーザー] を選択
- 対象ユーザーを選択し、[OneDrive] タブを開く
- [ファイルへのアクセス権の取得] をクリック
- 後継者のメールアドレスを入力
ステップ3:ライセンスの割り当て解除
データ保持の対応が完了したら、ライセンスを解除します。
Microsoft 365管理センターでの操作:
- [ユーザー] > [アクティブなユーザー] で対象ユーザーを選択
- [ライセンスとアプリ] タブを開く
- 割り当てられているライセンスのチェックを外す
- [変更の保存] をクリック
30日後、ユーザーのコンテンツは、Microsoft 365から完全に削除され、回復できません。
データ保持が必要な場合は必ず事前に共有メールボックスへの変換などの対応を行ってください。
ライセンス管理のベストプラクティス
1. 定期的な監査の実施
月次チェックリスト:
- アクティブなユーザー一覧と人事データの照合
- ライセンス未使用期間が30日以上のアカウントの確認
- 共有メールボックスのストレージ使用状況確認
Microsoft 365管理センターの [課金] > [ライセンス] では、使用中および未使用のライセンス数を確認できます。
2. 人事システムとの連携
理想的には、人事システムとMicrosoft 365を連携させ、退職日が確定したタイミングで自動的に以下の処理を実行する仕組みを構築します。
自動化のステップ:
- 退職予定日の2週間前:上長および後継者への通知
- 退職日当日:サインインブロックの実行
- 退職日+7日後:共有メールボックスへの変換とライセンス解除
- 退職日+30日後:最終確認と完了報告
3. ポリシーの文書化
組織として明確な退職者対応ポリシーを策定し、IT部門と人事部門で共有します。
ポリシーに含めるべき項目:
- データ保持期間(例:退職後1年間)
- 共有メールボックス化の判断基準
- アクセス権を付与する対象者の決定プロセス
- ライセンス解除のタイムライン
- 例外的な処理が必要な場合の承認フロー
こういうポリシーを策定しておくとスムーズですよね。
Microsoft Teams・SharePoint データの取り扱い
Teamsチャットの考慮事項
Teamsチャット内で共有したファイルは、アカウントが削除された場合、一定期間後アクセスできなくなります。
理由は、ユーザー個人の OneDrive for Business 内の Microsoft Teams チャットフォルダーに保存されるためです。
対応策:
- 重要なファイルはTeamsチャットではなくチャネルで共有する
- 退職前に必要なファイルをSharePointサイトまたはチームチャネルに移動
- OneDriveへのアクセス権を後継者に付与し、必要なデータを移行
SharePoint・Teamsチャネルの管理者権限
退職者がTeamsチャネルの所有者やSharePointサイトの管理者である場合、事前に管理者を追加しておくことでスムーズな引き継ぎが可能になります。
よくある質問と回答
Q1: 共有メールボックスに変換後、元に戻すことは可能ですか?
はい、可能です。
ただし、元のユーザーメールボックスに戻す場合は、再度ライセンスを割り当てる必要があります。
Q2: 50GBを超えるメールボックスはどうすればよいですか?
以下の2つの選択肢があります。
- 古いメールやアーカイブを削除して50GB以下にする
- Exchange Online Plan 2ライセンスを割り当てて100GBまで利用可能にする(ただしコストが発生)
Q3: 共有メールボックスに訴訟ホールドは適用できますか?
共有メールボックスに訴訟ホールドをかける場合は、Exchange Online プラン2のライセンス、またはExchange Online Archivingアドオンライセンス付帯のExchange Online Plan 1ライセンスが共有メールボックスで必要です。
Q4: 複数の退職者を一括で処理できますか?
PowerShellを使用することで、CSVファイルから対象者を読み込み、一括処理が可能です。
Microsoft 365の管理センターは、コスト削減のための強力なツールです。
本記事で紹介した手順を参考に、御社のライセンス最適化を進めていただければ幸いです。
免責事項:Microsoft 365の機能や仕様は変更される可能性がありますので、実施前には最新の公式ドキュメントをご確認ください。

