「パスワードがわからなくなって…」 「アカウントがロックされてしまって…」
情報システム部門に寄せられる問い合わせの中で、最も頻繁で、最も対応が単純なのが、このパスワード関連のトラブルです。
しかし、この「単純な問い合わせ」が、DX推進や戦略的なIT施策を進めるべき担当者の時間を大きく奪っているのが現実です。
本記事では、Microsoft Entra ID(旧Azure AD)の「セルフサービスパスワードリセット(SSPR)」機能を活用して、パスワード関連の問い合わせを劇的に削減する方法をご紹介します。
SSPRとは?なぜ導入すべきなのか
SSPRの基本
セルフサービスパスワードリセット(SSPR)は、ユーザー自身が管理者やヘルプデスクの介入なしに、パスワードをリセットまたは変更できる機能です。
ユーザーがアカウントにアクセスできない場合でも、事前に登録した認証方法(携帯電話、メールアドレスなど)を使って本人確認を行い、自分でパスワードをリセットできます。
ユーザーは https://aka.ms/sspr にアクセスするだけで、24時間365日、いつでもどこからでもパスワードリセットが可能です。
SSPR 導入による3つの大きなメリット
1. 問い合わせ工数の劇的な削減
ヘルプデスクへの問い合わせの約20%がパスワードリセット関連と言われています。
SSPR導入により、これらの問い合わせがほぼゼロになり、担当者は本来の業務に集中できるようになります。
2. ユーザーの生産性向上
ユーザーがパスワードを忘れた際に、ヘルプデスクの営業時間を待つ必要がなくなります。
特にリモートワーク環境では、すぐに自己解決できることの価値は計り知れません。
3. セキュリティの強化
管理者による手動パスワードリセットよりも、標準化された自動プロセスの方が、セキュリティポリシーを一貫して適用できます。
また、パスワードライトバック機能を使えば、オンプレミスADとクラウドのパスワードを同期し、セキュリティインシデント時の迅速な対応も可能になります。
ライセンス要件
必要なライセンス
SSPRの基本機能は、以下のライセンスで利用可能です:
- Microsoft 365 Business Standard以降
- Microsoft Entra ID P1またはP2
ただし、オンプレミスActive Directoryへのパスワードライトバック機能を使用する場合は、Microsoft Entra ID P1、Premium P2、またはMicrosoft 365 Business Premiumが必要です。
重要な注意点:2025年9月30日以降の変更
従来のMFAおよびSSPRポリシーでの認証方法管理は2025年9月30日に非推奨となりました。
新しい「認証方法ポリシー」への移行が必要です。
移行は自動移行ガイドを使用することで、数十分から1時間程度で完了でき、ダウンタイムは発生しません。
SSPRの有効化手順:ステップバイステップガイド
ステップ1:Microsoft Entra管理センターへのアクセス
- Microsoft Entra管理センター (https://entra.microsoft.com/) にサインイン
ステップ2:パスワードリセット設定の確認
- 「パスワードリセット」をクリック
- SSPRの設定画面が表示されます
ステップ3:対象ユーザーの選択
SSPRを有効にする範囲を選択します:
- なし:SSPRを無効化
- 選択済み:特定のグループのみ有効化(段階的展開に推奨)
- すべて:テナント内の全ユーザーに有効化
ステップ4:認証方法の設定
ユーザーがパスワードをリセットする際に使用する認証方法を設定します。
「リセットに必要な方法の数」
- 1つ:セキュリティと利便性のバランスを考慮
- 2つ:より高いセキュリティが必要な場合
利用可能な認証方法
- モバイルアプリ通知(Microsoft Authenticator)
- 最もセキュアで使いやすい
- プッシュ通知で承認するだけ
- モバイルアプリコード
- インターネット接続不要
- ワンタイムパスワードを入力
- 携帯電話
- SMSまたは音声通話
- 広く受け入れられている
- 連絡用メールアドレス
- 個人用メールアドレスに確認コードを送信
- スマートフォンを持っていないユーザー向け
ステップ5:登録設定の構成
「サインイン時にユーザーに登録を求めますか?」
- はいを選択(推奨)
- ユーザーが初回サインイン時に認証方法を登録するよう促されます
「ユーザーが認証情報を再確認するように求められるまでの日数」
- デフォルト:180日
- セキュリティ要件に応じて調整
(0日~730日 ※0日に設定すると再確認するメッセージは表示されません)
ステップ6:通知設定
「パスワードのリセットについてユーザーに通知しますか?」
- はいを選択
- ユーザーがパスワードリセットを実行した際に自分のメールアドレスに通知メールが送信されます
- 不正なリセットを検知できます
「他の管理者が自分のパスワードをリセットしたときに、すべての管理者に通知しますか?」
- はいを選択(セキュリティ重視の場合)
- 管理者アカウントの不正使用を早期に検知できます
ステップ7:設定の保存
各設定を編集した場合は、画面上部の「保存」をクリックして都度、設定を完了します。
参考:しくみ: Microsoft Entra のセルフサービス パスワード リセット
参考:チュートリアル: Microsoft Entra のセルフサービス パスワード リセットを使ってユーザーが自分のアカウントのロック解除またはパスワードのリセットを実行できるようにする
SSPR 導入前後の比較
定量的効果
SSPRを導入した企業の多くが、以下のような効果を報告しています。
- パスワードリセット関連の問い合わせ:80~90%削減
- ヘルプデスク対応時間:年間数百~数千時間削減
- ユーザーのダウンタイム:平均30分→5分に短縮
- コスト削減効果:年間数百万円規模
すごい効果だと思います。
実際にレポートで報告されているものです。
定性的効果
- 担当者がDX推進などの戦略的業務に集中できる
- ユーザー満足度の向上(いつでも自己解決できる)
- リモートワーク環境でのサポート負荷軽減
- セキュリティポリシーの一貫した適用
「パスワードを忘れました」という問い合わせは、単純でありながら、情報システム担当者の貴重な時間を大きく奪っています。
SSPRの導入により、この問題を根本から解決し、本来取り組むべきDX推進や業務改革に集中できる環境を整えましょう。
SSPRは設定自体は短時間で完了できる、比較的導入しやすい機能ですが、その効果は計り知れません。
今日から第一歩を踏み出し、情報システム部門の働き方改革を実現しましょう。
免責事項:Microsoft 365の機能や仕様は変更される可能性がありますので、実施前には最新の公式ドキュメントをご確認ください。

