Microsoft は 2026年7月1日付で Microsoft 365 商用ライセンスの価格を改定すると正式発表しました。
ただ値上がり分を受け入れるのではなく、今回の改定を機に自社のライセンス構成を見直すこと——これが最も賢い対応策です。
本記事では、「損をしない」プラン選択の判断軸を解説します。
値上げのMicrosoft 側の説明と背景
なぜ値上げされるのか
Microsoft の Nicole Herskowitz は、今回の価格改定について次のように説明しています。
組織は、より複雑化する脅威の状況、高まる IT 需要、そして AI を活用した変革の必要性という課題に直面しており、
これらの課題に対応できるよう、AI によって強化された追加のセキュリティと管理機能を Microsoft 365 に追加し、全体の価値を高める、とのこと。
Microsoft 365 の進化:新機能の追加と価格改定(Windows Blog for Japan, 2025年12月)
過去1年間で Microsoft 365・Security・Copilot・SharePoint を通じて1,100 以上の新機能がリリースされており、AI 統合(Copilot Chat のすべてのユーザーへの展開など)、セキュリティ強化(Microsoft Security Copilot の展開)、デバイス管理機能(Intune Suite の上位機能の標準化)が主な理由として挙げられています。
顧客が十分な準備期間を確保できるよう、実施の約7か月前にアナウンスしたことも特徴的です。
今回の改定で「何が追加されるのか」
値上げの理由として掲げられた機能強化は、単なるコスト転嫁ではなく、実際に注目に値する内容です。
AI 機能の拡張
- Microsoft Copilot のチャット機能(Copilot Chat)が Microsoft 365 サービスと統合され、AI 活用の基盤が拡張
※Word・ExcelなどでのCopilot機能は別途「Microsoft 365 Copilot」ライセンスが必要です。 - Copilot Chat が受信トレイや予定表を理解する「Agent Mode」への対応
セキュリティ機能の強化
- Microsoft Security Copilot などの AI セキュリティ機能が Microsoft Defender や Microsoft Entra と連携し、Microsoft 365 E5 環境でより高度なセキュリティ運用が可能になります。
- Microsoft Defender・Intune・Entra・Purview のセキュリティ AI エージェントのワークフロー統合
デバイス管理(Intune)の大幅強化
- Intune Remote Help(リモートヘルプ): ヘルプデスクがユーザー画面を安全に共有・操作できる機能
- Advanced Analytics: デバイスの健全性・パフォーマンス分析の高度化
Intune や Defender の管理機能が強化され、エンドポイント管理とセキュリティの統合がさらに進みます。
Microsoft Entra の ID セキュリティ強化について
条件付きアクセスの強化やエージェント時代の ID 管理など、2026年に向けた変更点の把握
あなたの会社はどのプランが最適か
Business Premium が「実質お得」になるケース
以下に該当する企業は、今回の改定を機に Business Premium への移行を検討してみてください。
ケース1 セキュリティ対策を強化したいが予算が限られている中小企業
Business Premium には Microsoft Defender for Business が含まれており、ランサムウェア・マルウェア・フィッシングへの次世代 EDR 保護が利用可能です。
中小企業がこのクラスのセキュリティを単体で調達する費用と比べると、コストパフォーマンスは非常に高いと言えます。
ケース2 テレワーク・BYOD(私物デバイス持ち込み)環境のある企業
Microsoft Intune によるデバイス管理が含まれているため、会社所有デバイスだけでなく社員の私物デバイスも業務データを保護した状態で管理できます。
デバイス紛失時のリモートワイプも可能です。
また、Entra ID P1 による「社外からのアクセス制限」も標準で利用可能です。
ケース3 Business Standard を利用中で、セキュリティアドオンを検討している企業
現在 Business Standard + セキュリティアドオン(Defender for Business 等)を別途契約している、または今後追加しようとしている場合、Business Premium に統合した方がコストと管理の両面で合理的になるケースが多いです。
ケース4 300名以下で E3/E5 を検討していた企業
E3/E5 は今回値上げ対象です。
かつ Business Premium は最大300名まで利用可能なため、セキュリティ要件によっては Business Premium で十分カバーできる可能性があります。
Business Standard/ Basic でよいケース
- 従業員数が少なく、デバイス管理の必要性が低い(10名以下で全員が社内固定 PC を使用するなど)
- セキュリティは別途オンプレミス製品やISP のサービスで対応済み
- コスト最優先で、機能は最小限でよい
「損をしない」ための今すぐできるアクション
アクション1 契約更新タイミングを確認する
年間契約の場合、2026年7月1日より前に更新すれば旧価格で1年間固定できます。
現在の契約更新月が何月か、すぐに確認しましょう。
管理者は Microsoft 365 管理センター の「課金情報」→「お使いの製品」から確認できます。
アクション2 ライセンス棚卸しを行う
全社員が本当にデスクトップ版 Office を使っているか見直しましょう。
Web版で業務が完結する社員が多ければ、Business Basic で十分な場合もあります。
逆に、セキュリティ機能を使えていないまま Business Standard を契約しているなら、Business Premium への移行でコストパフォーマンスが改善するかもしれません。
アクション3 Business Premium の機能を試す
既に Business Standard をお使いであれば、試用ライセンス(Trial)を使って Business Premium の機能(特に Intune・Defender for Business)を検証することができます。
移行前に実際の運用イメージを確認しておくことを推奨します。
アクション4 セキュリティ体制の現状確認
条件付きアクセスの強化や、Microsoft Entra の AI 時代への進化について、現在の ID・アクセス管理の状況を確認しておくことをお勧めします。
今回の改定を「プラン最適化の機会」に変える
今回の Microsoft 365 価格改定のポイントを整理します。
「ただ高くなった分を払う」のではなく、今こそ自社の利用実態とセキュリティ要件を照らし合わせて、最適なプランを選び直す絶好のタイミングです。
特に現在 Business Standard をお使いで、セキュリティ強化を課題と感じている企業にとって、Business Premium への移行は「値上げを受け入れつつ、実質的な価値を最大化する」選択肢になり得ます。
不安な点は Microsoft の認定ソリューションプロバイダーや IT パートナーに相談しながら、2026年7月までに最適な判断を行いましょう。
免責事項:Microsoft 365の機能や仕様は変更される可能性がありますので、実施前には最新の公式ドキュメントをご確認ください。

