「OneDriveにファイルをたくさん保存しているのに、PCのストレージが圧迫されて困っている」
――そんな悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。
その解決策が OneDrive のファイルオンデマンド(Files On-Demand) 機能です。
この機能を使えば、たとえばクラウド上に 2TB のデータがあっても、128GB の SSD しかない薄型ノート PC で「すべてのファイルが見える」状態を保ちながら、実際にローカルに保存されるのは今使っているファイルだけ、という理想的な運用ができます。
本記事では、仕組みの理解から設定手順、企業での活用方法まで、ファイルオンデマンドのすべてを解説します。
ファイルオンデマンドとは?
基本的な仕組み
ファイルオンデマンドとは、OneDrive クラウド上のファイルを PC に保存していなくても、エクスプローラーからアクセスできる機能です。
従来は、OneDrive フォルダー内のファイルをローカルに同期(ダウンロード)する前提の使い方が一般的でした。
しかしファイルオンデマンドでは、プレースホルダー(ファイルの「幽霊」) だけがローカルに存在し、実体はクラウドに置かれます。
ファイルを開こうとした瞬間にだけ、インターネット経由でダウンロードされる仕組みです。
Windows 10 Fall Creators Update(バージョン 1709)以降で利用可能になり、現在の OneDrive クライアントでは多くの環境で既定で有効になっています(ただし、組織のポリシーや環境によっては無効化されている場合もあります)。
ファイルの「3つの状態」を理解する
ファイルオンデマンドでは、すべてのファイルとフォルダーが次の3つの状態のいずれかにあります。
エクスプローラーの「状態」列に表示されるアイコンで一目で確認できます。
| 状態 | アイコン | 説明 | ストレージ消費 |
|---|---|---|---|
| オンラインのみ | 青い雲マーク | 実体はクラウドのみ。開くと自動ダウンロード | なし |
| ローカルで使用可能 | 白抜きの緑チェック | 一度開いたファイル。一定期間使わないと自動的に「オンラインのみ」に戻ることがあります。 | あり |
| このデバイスで常に使用可能 | 塗りつぶし緑チェック | 右クリックで指定した状態。オフラインでも常に確実に開けます。 | あり(固定) |
重要な動作: オンラインのみのファイルを一度開くと「ローカルで使用可能」になります。
その後、Windows のストレージセンサーや手動操作によって「オンラインのみ」に戻すことができます。
設定方法(Windows)
1. 全体設定(全ファイル一括)
- タスクバーの通知領域にある OneDrive アイコン(雲マーク) をクリック
- 右上の 歯車アイコン(ヘルプと設定) → 「設定」 を選択
- 左メニューから 「同期とバックアップ」 → 「詳細設定」 をクリック
- 「ファイルオンデマンド」セクションで以下を選択:
- 「ディスク領域を解放する」ボタンをクリック
→ 既存のローカルファイルをすべて「オンラインのみ」に変更し、空き容量を即座に確保します。 - 「すべてのファイルをダウンロードする」 → すべてローカルに保持(オフライン利用可能)
- 「ディスク領域を解放する」ボタンをクリック
OneDrive のバージョンや UI によっては、「ファイルオンデマンドの有効/無効」を直接切り替える項目が表示されない場合があります。
その場合、「すべてのファイルをダウンロードする」を選択することで、実質的にすべてのファイルをローカル保持する動作になります。
2. ファイル・フォルダー単位の設定
より細かくコントロールしたい場合は、ファイルまたはフォルダーを 右クリック することで個別に設定できます:
- 「空き領域を増やす」 → そのファイル/フォルダーをオンラインのみに変更(クラウドに戻す)
- 「このデバイス上で常に保持する」 → 常にローカルに保持する(ピン留め)
フォルダーに設定を適用すると、その中のすべてのファイルに同じ設定が反映されます。
3. Mac での設定
Mac でも同様の機能が利用可能です。
メニューバーの OneDrive アイコンから設定を開き、「ファイルオンデマンド」を有効にします。
ファイルオンデマンドは、APFS(Apple File System)形式のボリュームでの利用が前提となります(最新の macOS および OneDrive クライアントが必要です)。
また、ファイルオンデマンドの設定はデバイスごとに固有のため、利用するすべてのデバイスで個別に設定が必要です。
こんな場面で活用しましょう
ケース1:
128GB SSD のノート PC で 1TB の業務データを扱う
「アーカイブ用の過去プロジェクトデータ(数百GB)」と「現在進行中のプロジェクト(数十GB)」が混在するような場合、過去データはオンラインのみ、進行中のデータはローカル保持という使い分けが理想的です。
→ フォルダー単位で「このデバイス上で常に保持する」を進行中プロジェクトフォルダーだけに設定 することで、実現できます。
ケース2:
新しい PC へのデータ移行時
新しい PC に OneDrive をセットアップすると、すべてのファイルがプレースホルダーとして表示されます。
全データをダウンロードするには大量の時間と通信量が必要ですが、ファイルオンデマンドなら必要なファイルだけ随時ダウンロードできるので、移行直後から快適に作業できます。
ケース3:
写真・動画などの大容量ライブラリ管理
数千枚の写真や動画をクラウドに保存しつつ、PC には最近の数ヶ月分だけをローカル保持する運用が可能です。
過去のアルバムは参照するときだけダウンロードされます。
注意点と落とし穴
オフライン環境では「オンラインのみ」ファイルは開けない
出張先や機内など、インターネット接続がない環境では、オンラインのみのファイルにアクセスできません。重要な会議資料や作業ファイルは、事前に「このデバイス上で常に保持する」に設定しておくことを強くお勧めします。
「空き領域を増やす」の誤クリックに注意
右クリックメニューの「空き領域を増やす」を誤ってクリックすると、ファイルの実体がローカルから削除されます(クラウドには残ります)。オフライン時に開けなくなるため、誤操作には注意してください。
オンラインのみのファイルをエクスプローラーで削除すると…
エクスプローラーで削除すると、実体がローカルになくても「削除した」という情報が同期され、クラウド上のデータもごみ箱へ移動します。
PCの容量を空けたいだけのときは「削除」ではなく必ず「空き領域を増やす」を選択してください。
ファイルオンデマンドの設定はデバイスごとに独立
自宅 PC と会社 PC で同じ OneDrive アカウントを使っている場合でも、ファイルオンデマンドの設定(どのファイルをローカルに保持するか)はそれぞれのデバイスで個別に管理されます。
企業・IT管理者向け:ポリシーによる一括制御
企業環境では、グループポリシーや Microsoft Intune の管理用テンプレートを使って、組織全体のファイルオンデマンド設定を一括制御できます。
主要な GPO 設定
| ポリシー名 | 説明 |
|---|---|
| FilesOnDemandEnabled | ファイルオンデマンドを強制的に有効化 |
| DehydrateSyncedTeamSites | チームサイトの同期をオンデマンドに設定 |
活用シナリオ:
- ストレージ節約の強制:
全社員の PC に対してファイルオンデマンドを強制有効化し、PC のストレージ消費を抑制する - 逆に無効化が必要な場合:
常時オフライン環境で作業するユーザーには、全ファイルのローカル保持を強制することも可能 - 帯域幅制御:
AutomaticUploadBandwidthPercentage ポリシーと組み合わせることで、同期による帯域圧迫を防ぐ
また、IT 管理者が考慮すべき関連機能として 「既知のフォルダーの移動(KFM)」 があります。
デスクトップ・ドキュメント・ピクチャフォルダーを OneDrive に自動リダイレクトし、ファイルオンデマンドと組み合わせることで、PC の空き容量を自動的に確保する構成が実現できます。
Azure Identity / Entra ID との関係(IT管理者向け補足)
OneDrive for Business の認証基盤は Microsoft Entra ID(旧 Azure Active Directory) です。
企業環境でのシームレスなサインインには、デバイスが適切に Entra ID に登録・参加されていることが前提となります。
たとえば、Office アプリのサインイン時に表示される「このデバイスのすべてのアプリ、Web サイト、サービスにサインインしますか?」というダイアログは、Entra ID へのデバイス登録(Workplace Join)を促すものです。
この登録を適切に行うことで、OneDrive の SSO(シングルサインオン)が有効になり、ファイルオンデマンドの認証もスムーズに動作します。
ベストプラクティスまとめ
効果的なファイルオンデマンド運用のために、以下を参考にしてください。
- 重要ファイルは事前にピン留め → 出張・外出前に「このデバイス上で常に保持する」を設定する
- フォルダー単位で管理 → ファイル個別ではなくプロジェクトフォルダーごとに設定するとミスが減る
- 定期的に「ディスク領域の解放」を実行 → しばらく使っていないファイルをまとめてクラウドに戻す
- インターネット環境を確認してから作業開始 → Wi-Fi 接続の質によってファイルオープンの速度が変わる
- 企業環境では GPO で統一管理 → 個人任せにせずポリシーで標準化すると IT ヘルプデスクの負荷が下がる
おわりに
ファイルオンデマンドは、「クラウドに実体を置きながら、まるでローカルにあるかのように扱える」という、モダンワークプレイスに欠かせない機能です。
正しく理解して活用すれば、容量の少ないモバイル PC でも何テラバイトものデータをストレスなく扱えます。
ぜひ今日から、右クリックメニューの「空き領域を増やす」と「このデバイス上で常に保持する」を使いこなして、PC のストレージを賢く管理してみてください。
免責事項:Microsoft 365の機能や仕様は変更される可能性がありますので、実施前には最新の公式ドキュメントをご確認ください。

