退職した社員のデータが消える!?管理者なら知っておくべき「OneDriveの保持期間」とデータ継承

「あの退職した社員が持っていた提案書、どこに行ったんだろう…」

こんな経験はありませんか?
Microsoft 365 環境では、社員が退職してアカウントを削除すると、その人の OneDrive に保存されていたファイルも一定期間後に完全に削除されます。
会社にとって重要な業務ファイルが、適切な引き継ぎなしに消えてしまうリスクは、人の入れ替わりが多い組織ほど深刻です。

本記事では、アカウント削除後に OneDrive がどうなるのか、デフォルトの保持期間、マネージャーへの自動引き継ぎの仕組み、そして管理者として取るべきガバナンス施策を解説します。

1. アカウント削除後、OneDrive はどうなるのか

削除の流れ

Microsoft 365 管理センターでユーザーアカウントを削除すると、バックグラウンドで次のプロセスが自動的に動き始めます。

  1. アカウントの削除が SharePoint に同期される
  2. OneDrive クリーンアップジョブが実行され、OneDrive が「削除対象」としてマークされる
  3. 削除されたユーザーは Microsoft 365 管理センターに 30日間 表示される(復元可能な状態)
  4. 保持期間(既定 30 日)が終了すると、OneDrive は削除済み状態へ移行
  5. 保持期間終了後、OneDrive サイトは SharePoint の「削除済みサイト」状態となり、さらに約93日間は SharePoint 管理者が復元可能です。
  6. 合計約123日(既定30日+約93日)を過ぎると、Microsoft 365 の標準機能では復元できなくなります。

「サインインのブロック」や「ライセンスの削除」だけでは、クリーンアップのプロセスは開始されません。クリーンアップが始まるのは、Microsoft Entra ID(旧 Azure AD)からユーザーアカウントが削除されたときです。

参考: OneDrive の保持と削除
参考: 削除された OneDrive を復元する


2. 既定の保持期間は「30日間」

OneDrive の既定の保持期間は 30日間 です。

この期間は SharePoint 管理センターで 30〜3650日(最大10年) の範囲で変更できます。

保持期間の変更方法(GUI)

  1. SharePoint 管理センター > [設定] を開く
  2. [OneDrive の保持期間] を選択
  3. [日数] に 30〜3650 の値を入力して保存

PowerShell での変更

powershell

Set-SPOTenant -OrphanedPersonalSitesRetentionPeriod <日数>

設定変更のタイミングに注意
保持期間の設定変更は、新たに削除されるユーザーに適用されます。すでに削除済みのユーザーについても、新しい保持期間が反映される場合がありますが、保持期間の起算日はユーザー削除日時のままです。

参考: 削除されたユーザーの OneDrive リテンション期間を設定する


3. 自動アクセス委任の仕組み(マネージャーへの引き継ぎ)

Microsoft 365 には、退職者の OneDrive データをマネージャー(上司)に自動的に引き継ぐ仕組みが組み込まれています。

マネージャーへの通知メール内容

  • 退職者の OneDrive へのアクセスリンク
  • 保持期間終了日(いつデータが削除されるか)
  • 保持期間終了の 7日前に追加のリマインダーメールが送信される

マネージャーが未設定の場合の危険性

Microsoft Entra ID でユーザーにマネージャーが設定されていない場合、かつ SharePoint 管理センターにセカンダリ所有者も設定されていない場合、誰も自動でアクセス権を受け取りません
この状態でアカウントが削除されると、保持期間中に気づかないままデータが消えてしまうリスクがあります。

注意:ライセンス剥離のタイミング
アカウント削除前にライセンスを削除してしまうと、この自動委任プロセスが正常にトリガーされない場合があります。
必ず「ライセンスを付与したままアカウントを削除」するか、削除ウィザード内でライセンスの処理を行ってください。

参考: OneDrive の保持と削除(自動アクセス委任)
参考: 出発する従業員のファイル転送を簡略化


4. 自動アクセス委任を確実に動かすための設定確認

手順1:アクセス委任の有効化確認

  1. SharePoint 管理センター > [その他の機能] > [ユーザープロファイル] > [開く]
  2. [個人用サイトの設定] セクションの [個人用サイトのクリーンアップの構成] をクリック
  3. [アクセス委任を有効にする] にチェックが入っていることを確認

手順2:セカンダリ所有者の設定

同じ画面の [個人用サイトクリーンアップ] セクションで、セカンダリ所有者のアカウントを指定します。
これは、マネージャーが設定されていないユーザーのデータを受け取る「フォールバック担当者」です。
IT 管理者や人事担当者のアカウントを設定しておくことを推奨します。

手順3:Microsoft Entra ID でのマネージャー設定状況確認

日頃から全ユーザーのマネージャーが Entra ID(旧 Azure AD)に正しく登録されているか確認しておきましょう。
退職の際に「マネージャーが誰も設定されていない」状態に気づくのでは遅すぎます。

参考: Microsoft Entra ID における削除されたオブジェクトの追跡


5. 手動でのデータ引き継ぎ手順

自動委任の仕組みとは別に、管理者が手動で別の社員に OneDrive のアクセス権を付与することもできます。

Microsoft 365 管理センターから行う方法

  1. Microsoft 365 管理センター > [ユーザー] > [アクティブなユーザー]
  2. 対象ユーザーをクリックし、OneDrive 関連の項目からファイルアクセス用リンクを取得します
  3. [ファイルへのリンクの作成] をクリックし、生成された URL をコピー
  4. そのリンクを引き継ぎ担当者に共有する

ファイルの移動方法

マネージャーまたはセカンダリ所有者は、退職者の OneDrive から自分の OneDrive または SharePoint サイトにファイルを移動できます。
「出発する従業員のファイル転送を簡略化」機能のガイドに従って転送を完了してください。

ファイル移行時は「移動」または「コピー」のどちらになるかを事前に確認しましょう
OneDrive のファイル移動機能を利用した場合、ファイルは新しい保存先へ移動されます。
ただし、共有リンクや Teams/アプリ連携への影響が発生する場合があるため注意が必要です。

参考: 別の従業員に OneDrive と Outlook のデータへのアクセス権を付与する


6. Teams チャットや共有ファイルはどうなる?

退職者が絡むファイルには、保存場所によって挙動が異なります。

保存場所退職者アカウント削除後の挙動
退職者の OneDrive に保存されたファイル保持期間(既定30日)後に削除
Teams チャネルに投稿されたファイルSharePoint チームサイトに保存されるため削除されない
グループチャットに投稿されたファイル退職者の OneDrive に保存されるため、保持期間後に削除
Teams 会議録画は、録画開始者や会議種別によって OneDrive または SharePoint に保存されます退職者の OneDrive に保存されている場合は、保持期間後に削除されます

グループチャットの添付ファイルや Teams の録画が退職者の OneDrive に保存されている場合、30日以内にダウンロードまたは別の場所へ移動しておく必要があります。


7. より高度な保全策:Microsoft Purview のアイテム保持ポリシー

「30日では足りない」「コンプライアンス上、退職後も数年間データを保持したい」という要件がある場合は、Microsoft Purview(旧 Microsoft 365 コンプライアンス) のアイテム保持ポリシーを活用します。

アイテム保持ポリシーとは

Exchange メール、SharePoint、OneDrive など Microsoft 365 全体のデータに対して、「〇年間保持する」「〇年後に削除する」といったルールを設定できる機能です。

重要な特性

  • アイテム保持ポリシーは通常の OneDrive 削除プロセスより優先されます。つまり、保持ポリシーが設定されていれば、OneDrive の保持期間(30日)が来ても、ポリシーが終了するまでデータは削除されません。
  • 同様に、OneDrive が電子情報開示ケースの一部として保留されている場合、マネージャーには削除予告メールが送信されますが、保留が解除されるまで OneDrive は実際には削除されません。

設定場所

Microsoft Purview ポータル > [ソリューション] > [データライフサイクル管理] > [ポリシー] > [アイテム保持ポリシー]

Microsoft Purview の保持機能は、多くの Microsoft 365 法人プランで利用できます。
ただし、高度な保持機能や自動ラベル付けなどは E5 または追加ライセンスが必要になる場合があります。

参考: 保持または削除するアイテム保持ポリシーと保持ラベルの詳細
参考: SharePoint と OneDrive の保持の詳細


8. 管理者が今すぐやるべきチェックリスト

退職者のデータを失わないために、以下の項目を定期的に確認・整備しましょう。

設定確認

  • SharePoint 管理センターで アクセス委任 が有効になっているか
  • セカンダリ所有者 が設定されているか(マネージャー未設定ユーザーのフォールバック)
  • 保持期間 が業務要件に合った日数に設定されているか(既定 30 日)

日常運用

  • 全ユーザーの Microsoft Entra ID にマネージャーが正しく設定 されているか(特に新入社員、異動後のユーザー)
  • 退職予定者が出たら、退職前に OneDrive の整理・引き継ぎを本人に依頼する
  • Teams のグループチャット添付ファイルや録画が退職者の OneDrive にないか確認する

コンプライアンス要件がある場合

  • Microsoft Purview の アイテム保持ポリシー を OneDrive に適用しているか
  • 法定保存が必要なドキュメントに 保持ラベル を付与しているか

まとめ

項目内容
既定の保持期間30日(変更可能:30〜3650日)
削除後の復元可能期間保持期間終了後さらに 93日間(管理者のみ復元可能)
完全削除までの合計合計約123日(既定30日+約93日)を過ぎると、Microsoft 365 の標準機能では復元できなくなります。
自動引き継ぎマネージャー(Entra ID に設定が必要)またはセカンダリ所有者に自動通知・アクセス権付与
より長期の保全Microsoft Purview アイテム保持ポリシー(E3/E5 ライセンス)を活用

注意
退職者アカウントに Exchange Online ライセンスが割り当てられていない場合、一部の自動通知メールや引き継ぎ体験が期待通り動作しないケースがあります。

退職者のデータガバナンスは「退職してから考える」では手遅れになります。マネージャーの設定、保持期間の見直し、アイテム保持ポリシーの活用を組み合わせて、会社の大切な情報資産を守る仕組みを今から整備しましょう。

免責事項:Microsoft 365の機能や仕様は変更される可能性がありますので、実施前には最新の公式ドキュメントをご確認ください。

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